私を甲子園につれてって
……ということを言われたので、水曜日(25日)、早々と仕事を切りあげ、甲子園へと向かった。
いや、実際には恐ろしいほど熱烈なタイガースファンのU子さん(仮称)に連れて行かれたのだ。
甲子園に行くのははじめて。野球観戦も、万博球場に高校野球予選の応援に行ったぐらいだった(たしなみ程度に応援団をやっていたので)。特にタイガースファンでもないので、ノリきれるのか少し不安だった。
阪神梅田駅からの電車は、タイガースファンとおぼしき人たちで満杯。
甲子園駅も人だらけだった。
スーツ姿の男性たちも、弁当を手に持ってやってきていた。仕事帰りの観戦が、生活サイクルの中に組み込まれているということなのだろう。
甲子園といえば、イメージするのは壁面にびっしり生えたツタであるが、改修中のため、よく見るとテクスチャであった。
ウェーブ禁止というのもなんだかショック。
僕が球場に着いたときは、すでに試合が始まっていた。仕事が休みで先に来ていたU子さんと合流。隣に座る。
僕たちの席は一塁側アルプス。結構前の方だった。バッター席からは遠かったので、選手の区別はほとんどつかなかったけど。
選手は電光掲示板を見て判別していたものの、「しまたに」とか「はやし」などと誤って口走らなくてよかった。
「はい、どうぞ」と手渡されたのは一対の細身のメガホン。これを振って応援するというのか……。
U子さんは少し大きめのメガホンを持っていた。子どものころから使っているという。名前まで書いてあった。
筋金入りのタイガースファンのU子さん。選手の応援歌をすべて覚えており、メガホンを叩きながら応援歌を口ずさんでいた。
メガホンの振りや叩き方も、選手によって異なる。僕は振りについていくのがやっとだった。
試合中の写真があまりとれなかったのは、途中で大雨が降ったからだ。僕が傘をさすと、「みえへんやんけー」と後ろの人に軽く野次られた。
U子さんも傘をさしたものの、攻撃の回に入ると傘を投げ出してメガホンを振りはじめてしまった。その行動の移行がやけにスムーズで、まさに身体化されているのである。結果として、U子さんを雨からかばうかたちとなり、傘はさしたものの、右半身がずぶぬれになってしまった。
次の守備の回に入ると、U子さんは「カッパ買ってきます」と席をたった。僕はぼつねんと取り残されたのであるが、ファンの真髄を彼女に見たような気がした。
雨は通り雨で、しばらくして止んだ。
お弁当を食べつつ観戦。
守備の回はわりあいリラックスできる。
7回に入ると、「はい」と、今度はジェット風船を2本手渡された。これを膨らませるというのか……。と思ったら、周りのみんなもどこからともなく取り出した風船を膨らましはじめた。
阪神の攻撃に入る前、「六甲おろし」をフルコーラスで歌ったあと、みんなで風船を空に放つ。
いつの間にか僕もノリノリでメガホンを振るっていた。チャンスになると「わっしょいわっしょい」とメガホンを上げたり。点が入ると立ち上がって喜んだ。
試合はサクサクと進み、9時前には終了した。
阪神の勝ちだった。ヒーローインタビューで今岡(だったと思う)が観客席にボールを投げてまわる。そのあとトラッキーもついていく。トラッキーは大人にも人気で、スーツ姿の男性が小走りに駆け寄ってケータイカメラでとっていた。今思うと、子どもに見せるためだったのかもしれない。
我々も撤収、かと思いきや、応援団の鳴り物にあわせ、本日出場したメンバーの応援歌をひととおり歌い、さらに「六甲おろし」を歌い、最後にバンザイをしてからであった。メガホンの振りつけはほとんど間違いなくできるようになっていた。
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