足止めと何もしない日(読書)
シーワに滞在して数日。僕は足止めを食っていた。シーワの後は、さらに南東にあるバハレイヤ・オアシスに行くつもりだった。しかし、シーワ-バハレイヤ間には定期バスが無く、砂漠をランドローバーに乗って渡るツアーに参加するのがポピュラーな移動方法だった。しかもタイミングの悪いことに、そのツアーは僕がパームツリーホテルに泊まることにした日にちょうど出発したばかりで、次のツアーの人が集まるまで待つしかなかったのである。鉱泉や遺跡を見に行ったりもしたが、それほど数は多くないので二日もあれば見終わってしまう。
そういえば、大学の教員Z氏は、週に一回は何もせずに身体を休める日を作れとおっしゃっていた。暑い中を毎日動いていると、自分でも気づかない間に疲労が溜まっていくのかもしれない。何もしない日というのも、たまにはいいだろうと思った。読書や散歩でもしよう。
僕が日本から持ってきた本は、妹尾河童の『少年H』だ。妹尾氏の少年期を描いた小説であり、またH少年の目を通して見た戦争を描いたものでもある。ちょこちょこと読んでいたが、シーワに来て一気に読み上げた。
この本のことで真っ先に思い出すのは、H少年が描いた親子丼の絵である。挿絵はなく、文章のみの描写なのだが、本当に美味そうに思えた。普段ほとんど食べないのに、このときほど親子丼が恋しいと思ったことはなかった。また、後半になるにつれ深刻になっていく戦争の克明な描写も、身につまされる思いで読んだ。
戦争が妙にリアルというか、切に感じられて、なんだか、礼拝を呼びかけるアザーンの声まで空襲警報のように思えてきて陰鬱な気分になってしまった。
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